事例1:某市OJTトレーナー制度
【OJTトレーナー制度導入の背景】
某市では、「能力は高い」が「指示待ちが多く、消極的」「疑問があっても自発的に聞いてこない」新人が増加傾向にありましたが 、同時に組織の人員構成も変化し業務の内容や質が複雑化・高度化してきている中では、業務を通して能力育成をする従来型のOJTが機能しにくくなってきました 。
その結果、新入職員の早期離職(休職)や思うように育たないという現場からの声が多数寄せられるようになりました。
そこで、OJTを見直し、職場で機能させる 新たなしくみをつくる取り組みをすることとなりました。
この取り組みでは、 単に専任の指導係をつけ、技術や作業の仕方を教えるだけでなく、職場全体で新人を育てる体制・風土を醸成することを目的とする「OJT トレーナー制度」が導入されました。
【OJTトレーナー制度の特徴】
①新人職場導入年のOJTトレーナー制度
②職場への受け入れから常識・基本の習得
に絞ったことです。
【制度導入までの歩み】
年度 | 内容 |
---|---|
2001年 | 育成担当者(先輩)へアンケート実施 指導するうえでの課題、新人の傾向等 一部の OJT 担当者向け研修 スタート アンケートを参考に内容構成 |
2003年 | 新任係長研修の一部として「OJT 指導研修」実施( 1 日間 × 複数回 ) 部下指導に対する意識の差が激しく、中には役割外との認識もあり。 職場での指導方法のヒントを得られた方も多数いたが、様々な問題も露呈。 |
2004年 | 新採用職員受け入れ部署の係長(約 350 名)を対象に「OJT 指導研修」実施 職員育成計画書に基づく指導ポイントの理解を図る 。 「計画的にできる」「達成状況が確認できる」「職場全体で育成できる」等の声があった。これまで実践してきた部下指導育成方法、考え方を見直す絶好の機会となった。 |
2005年 | OJTトレーナー制度 本稼働 「某市人材育成ビジョン」のなかで、「OJT」を 人材育成の柱に据えることが明記される。 指導育成する係長を「育成者」 指導担当する職員を「トレーナー」 として明確に位置付ける。 |
【トレーナー制度の年間予定】
時期 | 実施内容 |
---|---|
4月初旬 | 新採用職員研修 育成者・トレーナー選定、新採用職員アンケート |
4月下旬 | 育成者説明会 、育成計画書提出 |
2月初旬 | トレーナー研修 、 中間レポート提出 |
2005年 | フォローアップ研修 、まとめ レポート提出 |
※年を追うごとに制度の認知度が高まり、参加意識の向上がみられる。 しかし、受け身の姿勢・自身のやり方に固執されるベテラン職員もまだまだいる。半日コースにしてからは消化不良になりがち 。
< トレーナーアンケートより>
・トレーナーを通じて業務に関する新たな知識を習得したり、再確認でき、貴重な体験。
・説明の仕方、教え方等について考えさせられることが多く、自身の業務改善にもつながった 。
・担当業務を正しく理解したうえで指導していくことがいかに大変か実感した。
・研修を通じて他のトレーナーと悩み・苦労を分かち合えた。
・自身の業務が繁忙ななか、指導できる余裕がない 。
・同僚や上司が非協力的で、一人に任せきり。職場全体で取り組むことが必要。
・トレーナー研修は配属前に実施されるべき。
・トレーナーのフォローも必要。
事例2:大手金融機関/若手職員活性化と女性職員管理職登用促進のための職員意識調査
【調査実施の背景】
時代の流れとともに、働く一人ひとりの意識や価値観は大きく変化する中で、これら意識や価値観の変化は、職業観の多様化を生み出し、組織の運営自体にまで大きな影響を及ぼすに至っていた。
当該金融機関でも、男女雇用均等から始まる女性の社会進出が常態化したことにより女性職員の比率が高まり、キャリア的にも管理職相当の女性職員が増えてきた。しかし、管理職昇格に関して消極的な女性職員が大半であるため、女性職員の管理職登用推進が組織ビジョン実現にあたり重要な課題として認識された。
このような状況の中、組織として組織のビジョンを実現するために効果的な組織運営を図っていくためには、当事者自身がどの様 な意識を持って職務に取り組んでいるのか、どの様なことが職員のやる気の源泉になっているか、また、どの様なこと が成長・発展の阻害要因となっているのか、現状を客観的かつ定量的に把握することが重要であると認識された。
【調査の目的】
■ 中堅職員の日常業務やマネジメントに対する意識や考え方の特徴把握
■ 女性職員の活用化施策検討のための基礎情報の取得
■ 女性研修や管理職研修における実践的プログラム策定のため現状把握
【調査の方法】
性差等の多様性を活かした組織運営を図るための課題抽出を行う診断ツールである「ダイバーシティ・マネジメント・サーベイ」 を活用。
組織運営に欠かせない7つの要素から、現在の組織風土と社員の意識レベルを把握し、現在の組織の強み・弱みを見極めるとともに、ダイバーシティ推進(多様性を活かして組織力を高める)の方向性を明確にする。7つの要素から落とし込んだ28の項目は実情と目的に合わせて協議を重ねモレなくダブりなく設定。
仮説を立てることにより特定の方向に収斂することを回避するためにも最初から仮説を立てることなく、組織全体を網羅して質問項目を設定し、本質的課題を探る。
【調査の概要】
<調査対象者> 全国各機関の監督職(代理・係長相当職)の男女職員 約 1700 名
女性職員が働きやすくするための制度は十分に整備されていて満足度も比較的高いものの、制度の活用面における職場の風土に問題があることが判明。
また、管理職へのキャリアアップに対する意欲が個々の事情に合わせた配慮の欠如や評価に対する疑問等から低下している側面もうかがい知れた。
従来の仮説検証型の課題抽出ではなかなか得ることができない、納得度の高い課題と対策が明らかになった。
<成果物> 基本診断分析票32P/診断分析報告書720P