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戦略的人材開発に求められる人材アセスメント

三原講師

経営コンサルタント 三原昭久氏

1958年生まれ。日本大学法律学部法律学科卒業。大手上場企業にて営業、マーケティング業務に従事。
その後、住友ビジネスコンサルティング株式会社(現在の日本総合研究所)に入社。
経営コンサルタントして管理職研修、営業、OJT研修等に携わる。外資系コンサルティング会社(PDIジャパン)シニアコンサルタントを経て、現在は知恵プラス株式会社コンサルタントとして、行政機関および一般企業からの依頼による経営指導、社員研修にあたっている。


私は、リードアセッサーとして、それこそ大手企業の経営層からマネジャー、マネジャー候補までの階層の「人材アセスメント」を内資系外資系の100社以上の企業で実施してきました。
この体験を踏まえながら、戦略的人材開発に求められるツールである「人材アセスメント」についてお話したいと思います。

 

Q1:いま、アセスメントが注目されているのでしょうか?

企業を取り巻く経営環境が大きく変化する中で、組織を継続的な成長・発展のために、多くの企業では、優秀なリーダーの選抜と育成が、重要な経営課題の一つとして捉えられています。つまりこれまでよりも組織は優秀な人材を発掘し、その能力を最大限に高め、戦略的に人材開発・活用を図っていく必要性が高まっています。そのリーダーの選抜・育成のツールとして、大いに着目されているのが「人材アセスメント」なのです。

 

Q2:通常の人事考課とアセスメントはどのように違うのでしょうか?

人事考課は、主に直属の上司が部下の仕事ぶりを観察して、その成果や能力を測定し、評価するものです。それに対して、アセスメントは顕在化した能力だけでなく、潜在能力を含めて総合的に評価していくものと考えられています。また、アセスメントでは、現在の職務に必要な能力だけでなく、これから将来必要になってくる能力や潜在能力を含めた資質を総合的に把握し、評価することになります。

三原講師

Q3:アセスメントの目的や特徴について

アセスメントの目的は、大きく2つの大別できると思います。
1つ目はセレクションの目的で使うことです。具体的には、組織内での昇進や昇格の人事上のデータとして活用することです。2つ目の目的はディベロップメントです。つまり社員の能力開発に活用することです。能力開発に向けた学びには、前提として気付きや動機づけが必要になります。この人材アセスメントは、参加者にとって重要な気づきを与えるツールといえます。外部の専門家から見た客観的なデータをフィードバックすることで、自己の強みや弱みの把握を促進させ、何を学ぶのかを明確にし、学びに向けた意欲を高めることができるからです。
ただし人材アセスメントは1970年代に日本に導入されていますが、その導入当初からセレクションのみの目的によるアセスメント導入は日本企業の持つ企業文化ではなじまなかったためか、セレクションとディべロップメントの2つのスタイルを統合して運用する方式をとることが多いのが実情と言えます。

 

Q4,では、「人材アセスメント」プログラムを具体的にどのように進めていくのでしょうか?

まず、アセスメントでは、参加者の能力を評価するためのディメンション(コンピテンシー)を設定することからスタートします。
私どもでは、事前にお客様のビジネスや経営課題などのお話をうかがったうえで、求められる人材像を明確にして、コンピテンシーを設定します。その上で、そのコンピテンシーを効果的に測定できる演習課題を設定します。通常はインバスケット演習、面談演習、討議演習等を組み合わせて設定します。また、行動科学の「過去の行動は将来の行動を予測する」の考え方に基づいた参加者の職務現場での行動をインタビューする面接(コンピテンシーインタビュー)を実施します。

 

三原講師

Q5、では「人材アセスメント」の主要な特徴はどのようなものなのでしょうか?

まず、評価の仕方です。
演習を通して、参加者の行動特性を観察するアセッサー評価の客観性や妥当性を高めることが必要です。そのために当社では、一人の参加者の全ての演習を一人のアセッサーが単独で評価するのでなく、演習ごとに評価するアセッサーを変えるなど、多面的な評価を進めることで、「評価」の客観性や妥当性を高めます。
また、アセスメントの能力開発への活用という視点では、本人へのアセスメント結果のフィードバックを適切に実施するようにしています。
当社では、アセスメント結果を人事部門様用と参加者用のレポートを提出します。参加者へは、結果レポートの提出だけでなく、アセッサーとの面談の機会を持っていただくようにしています。
フィードバックでは、評価の根拠となる演習で発揮された行動とその行動からもたらさられる影響を、具体的に説明します。そのあとに、この結果をどのように受け止めたらいいのか、その結果を受けて何をどうすればいいのかを話し合います。ここまで実施することで、アセスメント結果を深く受け止めて、能力開発に向けた動機づけができるものと考えます。せっかく「人材アセスメント」プログラムを実施しながら、残念ながら「フィードバックセッション」構築までに至らないケースが相当数みられるようです。しかしながら、参加者に「気づき」を与えて自分の問題として受け止めてもらい能力開発につなげていくためには、行動変容を促し成長するプロセスとしてのフィードバックセッションを構築する意味は大きいものと思われます。


< 次 回 >

次回テーマは「中堅アセスメント活用の有効性」を予定しています。